東京国際映画祭で、マレーシア出身ブラッドリー・リュウ監督の「モーテル・アカシア」上映


第32回東京国際映画祭が10月28日~11月5日まで、六本木ヒルズほかで開催されました。

 

東南アジア映画に焦点を当てた「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA ♯06 ファンタスティック! 東南アジア」では、SF、ホラー、ファンタジーなど、異世界を描いた東南アジア映画が紹介されました。残念ながら、マレーシア映画の上映はなかったのですが、それぞれの地域の世界観が現れていて、なかなか面白かったです。

 

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さて、そんなわけで、今回の東京国際映画祭では、ザ!マレーシア映画はなかったのですが、マレーシア出身で、現在はフィリピンを拠点に活動しているブラッドリー・リュウ監督の「モーテル・アカシア」が上映されました。(マレーシア関連では、「サイエンス・オブ・フィクションズ」にもAstro Shawがプロデューサーとして参加)

 

ブラッドリー・リュー監督は、年老いた(物まね)歌手を描いた長編デビュー作「墓場にて唄う(Singing in Graveyards)」が、2017年の大阪アジアン映画祭で上映されています。

 

今作「モーテル・アカシア」は、

 

雪山の中にあるモーテル。疎遠だった父親からこのモーテルを引き継ぐように言われたJCだが、(不法?)移民からお金をとって国外脱出の便宜を図るという触れ込みのこのモーテルは、実はモンスターを使って、不法移民を「始末」するための場所だと知り、それを拒否。車の中で争っているうちに父親は事故でなくなってしまうも、新たに3人の「客」がやってきて、JCはモンスターの正体もわからないまま、彼らの相手もしなければならず・・・。

 

といった感じのあらすじ。

 

正直、クリーチャー系の映画は普段ほとんど見ないので、あまりちゃんとした感想はいえないのですが、フィリピンのガベルという木の精霊(?)をモチーフにしたというモンスターは、迫力満点でした。

 

さらに、この映画では東南アジア数カ国のキャストが集結。主演のJCサントスと、父親の時代からモーテルへの客集めに協力してきた女性役のアゴット・イシドロはフィリピン、インドネシアのニコラス・サプトゥラ、タイのヴィタヤ・パンスリンガム、そしてわれらがマレーシアからは、ブロント・パラレ。東南アジアの人気俳優勢ぞろい、といった感じでした。

 

終映後のアフタートークで、司会をしていたプログラム・ディレクターの石坂健治さんに話を振られた、マレーシアのエドモンド・ヨー監督からも「東南アジアが結集していてうれしかった」という感想がありました。

 

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そして、映画の中でかなりきっちり描きこまれていたのが、移民問題。舞台としては架空の欧米のどこかの国(撮影はスロベニア)だったと思うのですが、トランプの移民政策のような報道が、画面の後ろで聞こえてきていたり、モーテルの近くに住んでいる人たちも、移民が「片付けられること」を歓迎していたり、といった話が挿入されていました。それについて監督は、「映画は声であり、一人のアーティストとしてできることをしていきたい。世界を変えることは、簡単にはできないかも知れないが、思うことを声にし、声を持つことは大事だと思う。クレイジーな世の中で声をあげ、憎しみあうのではなく、いい関係を築くために、声を使っていきたい」と言っていたのが、印象的でした。

 

来年の東京国際映画祭では、ザ!マレーシア映画も見れたらなと思います。