伝説の監督 ヤスミン・アフマド特集

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6本の長編作品と数々の素晴らしいテレビコマーシャルなどを残して、世界中の多くの人々に惜しまれながらヤスミン・アフマド監督がこの世を去ってから、この7月25日で10年が経とうとしています。これまでもヤスミン監督の作品は繰り返し日本で上映されてきましたが、今回は没後10周年ということで、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて、7月20日〜8月23日まで特集上映が行われます。上映スケジュールなど、詳しくはこちらからどうぞ。

映画『伝説の監督 ヤスミン・アフマド特集』公式サイト

 

さて、せっかくの長期に渡る全作品上映ということで、Makcik Bawang がちょっと変わった見所から各作品をご紹介します。

 

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『ラブン』(Rabun)

オーキッド4部作の第1作と位置付けられる作品で、ヤスミン監督自身のご両親をモデルにしたと言われており、実際にクアラルンプール近郊のご両親の家で撮影された。テレムービーとして作られたため、マレーシアにおける劇場公開はなかったが、実は6作品の中で『ラブン』が一番好き、という人も結構多い。

 

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『細い目』(Sepet)

ヤスミン監督の名を世に知らしめた名作。ヤスミン監督のミューズとして知られるシャリファ・アマニのデビュー作でもある。マレー系オーキッドと中華系ジェイソンの異民族間の恋物語を軸に、民族や言葉の混ざり具合やマレー優遇制度の問題などにも正直に、かつカジュアルに触れ、多民族国家マレーシアを巧みに映し出している。

 

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『グブラ』(Gubra)

『細い目』の続編ではあるが、オーキッドの物語とそれとは全く別の物語が並行して描かれている。イスラム教徒が犬を労わり触れるというシーンから、売春婦やエイズにまつわる話をも果敢に盛り込んで、様々な疑問をマレーシアの社会に投げかけ話題になった。「許す」ということの意味についても大きく考えさせられる作品である。

 

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『ムクシン』(Mukhsin)

オーキッドの少女時代に遡った淡く切ない恋物語。オーキッドはシャリファ四姉妹の四女、シャリファ・アルヤナが演じ、その母親役には当時既に女優やテレビ番組の司会者などで活躍していた長女のシャリファ・アレヤ。物語の途中でほんのすこしだけ『細い目』のオーキッドとジェイソンが意味深に登場するが、カメオといえば、ソファを引き取りにくる家具屋二人はホー・ユハン監督とリュウ・センタット監督である。

 

 

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『ムアラフ〜改心』

シャリファ・アマニ演じる主人公の妹役に、シャリファ四姉妹の三女、シャリファ・アレイシャが登場。スキンヘッドのアマニの頭にキスするヤスミン監督の写真が作品の公開前から多くのメディアに取り上げられた。シンガポールではコピー/盗撮される心配がないという理由から、先にシンガポールにて公開されたこともあり、マレーシアでの公開はタレンタイムの後となった。

 

 

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『タレンタイム』

これまでも何作品かに登場し、本作ではアヌアール先生を演じているのは、ヤスミン監督の個人ドライバーだったアヌアールさん。そしてその同僚で仲良しの中華系の先生を演じているのは監督の実のご主人。何度見ても涙してしまうシーンの一つが、ガンを患うハフィズの母親の病室でのシーンだが、演じているのは大女優の故アゼアン・イルダワティで、撮影当時は自身もステージ4のガン患者であった。